Massiveは難しい。ではなぜ難しいのでしょうか。それを理解できれば、Massiveをより理解できるようになるかもしれません。
(といっても難しいというのは主観的な感覚ですから、ひとによって感覚は異なります。シンセサイザーに慣れているひとはきっと、マッシヴは単なる減算式のシンセサイザーだから簡単だ、とかんがえるでしょう。しかし、多くの挫折者を出しているという事実から鑑みるに、一般的にいって難しいということができると思います。)
そのためにまず3つの写真を見比べてください。
- Minimoog (多くのミュージシャンに愛用された初期のシンプルなシンセサイザー)
- Massiveを私が塗りつぶしてMinimoogっぽくしたもの
- Massiveの原型
ボタンが多いと難しく感じるし、実際難しい
上記の3つの画像を比べて、一番難しそうに感じるのは3枚目のマッシヴそのもので、1枚目と2枚目は比較的簡単に見えないでしょうか。もしそうだとしたら、その理由は簡単で、操作できるボタンやツマミが多いほど、難しいと私たちは感じるからこそ、一番つまみの多いMassiveそのものは、一番難しく感じるということです。
どんなものでも基本構造は同じだが、最初から全部を考えようとすると、基本構造すらわからなくなる
上記の私が塗りつぶしたMassiveは、Minimoogと機能的に同じものです。そしてMinimoogはシンプルな構造でありながら、数多くの伝説的なアルバムでその音を聞くことのできる銘機であり、シンセサイザーに必要とされる基本機能は十分に持っているといえます。
ですから、私が塗りつぶしたMassiveをまず理解できれば、シンセサイザーの基本的な機能は使えるようになったといっていい、ということです。
しかし、実際には塗りつぶしたみっともないMassiveが保つ機能の範囲すら、使えていない人が多いのではないでしょうか。それはなぜかといえば、基本機能以外のツマミやボタンが多すぎて「どこに基本機能があるのかわからない」からです。
たくさんのパラメーターに惑わされて、基本機能に辿りつけないために、Massiveに挫折する人が多いといえます。少なくとも私はそうです!
Massiveを理解するために、いったん、Minimoogと同等の機能に制限しよう。
ですからMassiveを理解するためには、まずいったMinimoogと同等の機能に制限して、そこだけを理解すればいいのです。そしてそこからはじめてウェーヴテーブル方式 (例の忌々しいWp-positionなどが関連する機能です) や、Scream・Daftといった見慣れないフィルターに取り組めばいいはずです。
ですから本連載がまず辿り着こうとしているのは、Minimoogと同等の機能だけに制限して、それ以外のことは「まず飛ばす!」ということです。こうすることで、確実に次のステップに進むことができます。
そもそも、なぜ複雑な機能がついているのか?
そもそも、Massiveにたくさんついている、見慣れない機能はなんのためにあるのでしょうか?Minimoogがたくさんの伝説的なアルバムに使われていて、それ自体完成した楽器なのであれば、Minimoog以上の機能はいらないのではないでしょうか?
料理に例えるなら、飽きたら、味を変えたくなるから
料理に例えるなら、いつまでも同じ調味料しか使えないとすると、例えば醤油と味噌と塩しか使えないとすると、作れる料理の味のヴァリエーションは非常に限られたものになり、いつかは飽きてしまい、そして「味を変えたい」と思うようになるはずです。
そこでどうするかといえば、例えばナンプラーを買ってみたり、香辛料を追加してみたりするはずです。
シンセサイザーの発展の歴史も全く同じで、ある古典的な機能によって作られたサウンドに飽きると、どうにかして新しいサウンドが作れるような新しい音源方式が開発され、そしてその新しい音源方式によって生み出された新しいサウンドが、新しい音楽を作り出してきました。
そういう意味では、新しい音源方式というのは、古典的な音源方式の古典的なサウンドに飽きた人のためにある、新しい調味料のようなものだといえます。
全ての材料、全ての調味料がある中で、麻婆豆腐を作るのは難しい
話は少し変わりますが、アイドルが出演するバラエティ番組で、アイドルが山積みの食材、調味料をまえに、課題の料理をつくる、という企画を良く見ますよね。例えば、木綿豆腐も絹豆腐も卵豆腐も用意されていて、醤油からみりんから砂糖からヴァルミコ酢から、豆板醤もオイスターソースもウスターソースもケチャップも会場にあります。
こういった中で麻婆豆腐を作ると、詳しくない人は絶対にまずい麻婆豆腐を作り出します。
我々はMassiveから、これと同じ仕打ちを受けているのです!
必要な食材だけ用意されていれば、普通、麻婆豆腐は作れる
普通、麻婆豆腐に使う材料はこれくらいではないでしょうか?
- 木綿豆腐
- 豚挽肉
- 豆板醤
- 醤油
- 鶏ガラ
- 生姜
- にんにく
- 長ネギ
これがテーブルの上にあれば、だいたいだれでも麻婆豆腐が作れるはずです。なんとなく感覚で材料をいれていき、味が薄ければ足し、多ければ、多い時はもう一度やりなおしましょう…そうすればいつかは麻婆豆腐らしきものが作れます。
シンセサイザーも同じで、まずは基本機能だけに絞って作業をしていけば、なんとなく自分のほしい音が作れるようになります。
結局のところ、Massiveが難しいのは、全ての食材と調味料が既に用意されたテーブルで作業をしているからです。
今後の方針
ということで、この企画はまず、基本機能を押さえることを目標にします。
そして、基本機能がわかれば、次の少しコンテンポラリーな音源方式を理解する準備ができます。
ちなみに新しい音源方式は、何が良いのか?
シンセサイザーの歴史を考えてみると、新しい音源方式は「今までにない倍音構造を作り出すためにある」とまとめることができるのではないでしょうか。
倍音構造が異なるということは、つまり音色が異なる、ということです。ですから、異なる倍音構造を作り出せれば、異なる音色を作り出すことができます。シンセサイザーの役割のひとつは、まだ誰も聞いたことのない音を作り出すことですから、新しい倍音構造を持つ音源方式の開発は当然の流れだといえます。
前回の記事で説明した基本的な4波形にはない倍音構造を持つ波形を作るために、リングモジュレーターやオシレーターシンク、FM音源、ウェイヴテーブル、他にも様々な…音源方式を必要としたわけです。
見慣れない音源方式が、基本的ものと何が違うか考えればいい
そう考えれば、Massiveに含まれる少し難解な方式に対する取り組み方も明確になります。つまり、古典的で基本的な音源方式と、サウンドの面で何が違うのか、ということに注目すればよいはずです。(特に倍音構造)
逆に言うと古典的で基本的なサウンドに慣れ親しんでいなければ、新しい方式の良さも今一歩ピンと来ないかもしれません。(もちろん、なんとなく触って感覚でサウンドデザインをするという楽しみもあります。)
そういう意味でも、古典的なところから勉強を始めるのは、良いといえます。
まとめ
- Massiveが初心者にとって難しいのは、全食材・全調味料がおいてある会場で麻婆豆腐を作ると、挫折するのと同じ。
- なので、基本的なものだけに絞って作業をすれば、きっと理解できる。
- 新しい音源方式は、過去のサウンドに飽きた人のものであって、私達にはまだ早い!(少なくとも理解するには!)
ではまた!
すばらしい企画です!わくわくしながら読んでいます。
ありがとうございます。せっかく持ってる機材、フルに活用したいですよね。私も今回勉強して、かなりマッシヴがわかってきました!
分かりやすい説明でした!これで曲作りへ一歩前進できました!
どうも!
一つ分からないことあるんでお聞きしてもいいでしょうか?
Massive内で組み合わせた音はどこで聴くのでしょうか?その…なんというか、モニタリングというのでしょうか?
DAWソフトはFL-STUDIOです。
お答えしたいんですが、私はAbleton Live と Maschine の熱心なユーザーで、FL-STUDIOは使ったことがないんです。FL-STUDIOで他のシンセサイザーの音が鳴らせているなら、Massiveもなるはずです。もし他のシンセサイザーの音もならせていないなら、FL-STUDIOについて勉強する必要があります。
分かりました!FL-STUDIOでも鳴るという事さえ分かれば十分な収穫です!ありがとうございました!
エンジョイ!