実践編


では実際にDJをしてみましょう。

下準備

Fig. 10‑1

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iTunesから好きな曲をドラッグアンドドロップして、Fig. 10‑1の枠で囲まれた箇所に移動させます。これは自宅のレコード棚から、会場にもっていくためのレコードボックスに移す作業と似ています。予め当日プレイしたい10曲から20曲ほどをまとめておけば、素早く目的の曲にたどり着くことができます。

通常DJはある程度、選曲を自宅で済ませておきます。自宅のレコードを全て会場に持っていく人はいないわけですから、順番までしっかりと決めないにしても、絞り込みの作業は全ての人が行っています。また、曲順も完全に決めてくる人もいます。これはテクニカルなDJプレイをする人に多いようです。ほとんどREMIXといえるような技巧的プレイをするためには、前もって組み合わせや再生順を決めておかなくてはできないからです。

どれくらい準備してくるかはDJのスタイルによる部分が大きく、正解はありませんが、DJを始めたばかりなのであれば「完全に曲順やミックスする箇所を決めて」練習をしてみることをおすすめします。何故なら入念に準備をしてもできないことは、当日アドリブで行うことも当然できないからです。準備したプレイを完全にミスなくプレイすることを通して、フレキシブルなDJスキルを身につけることができます。

アナライズをする

フォルダーに好きな曲を何曲か集めたら、次はフォルダー内の曲をアナライズしましょう。(Fig. 10‑2) Control + クリックからAnalyzeを選択します。(これは、既に使ったことがある曲で、アナライズが済んでいるのであれば行う必要はありません。)

Fig. 10‑2

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ビートグリッド・BPMを正しく設定する

  1. 26 「Gridマーカーを調整する」を読んで、ビートグリッドを正しく設定してください。当日、耳をたよりにBPMをその場で合わせる自身がある人は行わなくても良いですが、この本の読者は恐らく設定したほうがいいはずです。

ビートがはじまる箇所にCueを配置する

曲によっては冒頭にビートがはいっていないものもあります。このような曲を頭から再生する場合、一体いつビートが入ってくるのか不安になります。もしかしたら1分もビートが入ってこない曲かもしれません。不安にならないために、ビートが入ってくる箇所にマーカーを配置し、そのマーカーの少し前から再生するようにすればよいでしょう。

この場合、マーカーを配置する場所は、ドラムが「本当に入ってくる位置」ではなくて、曲の「構成の単位として頭になる場所」にするべきです。例えばドラムのフィルが入ってくる箇所ではなくて、その後の「曲の構成上の頭」にCueを設定します。

1曲目を再生する

ではまず一曲目を再生してみましょう。(Fig. 10‑3) 中央のブラウズ・ノブで曲を選んで「A」ボタンを押せば、Deck Aに曲がロードされます。

Fig. 10‑3

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既にCueを設定してあるので、任意のCueボタンを押して、曲の冒頭に移動します。そしてPLAYボタンを押して、再生します。

再生中の曲をMasterに設定する

1曲目をMasterに設定するため、Shift + Syncを押してください。(Fig. 10‑4) Shiftをまずおして、Shiftを押したままの状態でSyncを押します。

Fig. 10‑4

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するとFig. 10‑5のように「Master」が点灯します。これで再生中のトラックがマスターになりました。なお、再生中のトラックしかマスターに設定することはできません。

Fig. 10‑5

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2曲目の準備をする

Fig. 10‑6

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次に枠で囲まれた箇所がBPMですから、これと大体同じBPMの曲であれば違和感なくつなげることができるので、大体BPM90〜110くらいの曲を探してみましょう。

Fig. 10‑7

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Fig. 10‑7のようにBPMが表示されているので、これを目安に次の曲を選択し、先ほどと同じ手順でLoad Bボタンを押して、Deck Bにロードします。この際に間違えてDeck Aにロードしないようにしてください。

二曲目を再生する前にSyncさせる

二曲目を再生する前に、Deck BのSyncボタンを押してください。すると今Deck Aの曲がMasterになっているので、Deck Bは「Deck AのトラックにSync」します。つまりDeck Bのトラックが「Deck Aと同じBPM」になります。これでBPMあわせをする必要がなくなります。

2曲目を再生する前に、フェーダーを下げ、音がでないようにする

2曲目を再生する前に、Deck Bのフェーダーを下げて、音が出ないようにしましょう。(Fig. 10‑8) なぜなら今から行う再生は、本再生、つまり会場に聞こえるように再生するのではなくて「1曲目とつなぐための下準備」のような再生だからです。下準備の様子が会場に流れては困るので、フェーダーを下げます。

Fig. 10‑8 フェーダーが上がっていると音が出てしまう

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音が外に聞こえない状態で、自分だけが確認するためにモニターをONにする

フェーダーを下げると自分にも音が聞こえません。ですので、Deck Bのモニターボタンを押し、点灯させます。(Fig. 10‑9)

Fig. 10‑9

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ヘッドホンをPhonesにさす

もしまだヘッドホンを用意していないのであれば、今Phonesと書かれたS2前面の端子に接続してください。この端子はiPhoneやiPodにさすような端子よりも大きい端子です。DJ用のヘッドホンを購入したのであれば付属品にアダプターがあるはずです。もし持っていないのであれば楽器屋・電器店で購入しましょう。

モニターの音量の調整

Fig. 10‑10のCUE VOLがモニター音量です。右に回すほど音が大きくなります。CUE MIXは左いっぱいにまわしてください。すると、モニターボタンをおしたトラックだけの音が聞こえます。

Fig. 10‑10

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再生しヘッドホンから音を聞く

では早速Deck Bを再生します。するとヘッドホンだけからDeck Bの音が聞こえます。Deck Bの音は外には聞こえていません。またヘッドホンからはDeck Aの音は聞こえていません。(もしDeck Aの音がヘッドホンから聞こえているなら、Deck Aのモニターボタンを消灯させてください。) この状態でいくつかの準備を行っていきます。

再生したい場所を探す

Deck Bのトラックの、どこから再生すれば良いのか、曲を再生しながら探していきます。一般的には曲の最初のドラムだけのイントロがあるので、ここから再生するのがイージーでしょう。しかし場合によっては曲の冒頭がヴォーカルやエフェクトだけであまりミックスに適していないと感じる場合もありますし、また曲の途中からDeck Bのトラックを始めたいこともあるでしょう。自分の中で最適だと感じられる場所を、曲を再生しながら探していきます。(ミックスに適した箇所についての考察は後述します。)

プラッターを回す

曲の中を探索する場合に一番簡単なのは、プラッターを回すことです。(Fig. 10‑11) 一般的にDJ風の動作と考えられている例の動きです。ヘッドホンを片耳だけして、レコードをぐるぐる回しているのは、そういうことです。この作業を通して、自分が再生したい場所を探すことができます。またアナログ・レコードであれば、針を完全に上げて、再生位置を大きく変えることもできます。レコードを手で回すだけでは、あまり移動できないからです。

Fig. 10‑11

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ビートジャンプ

S2の場合、アナログ・レコードと違って針を上げて再生位置を大きく変えることができないので、代わりに「ビートジャンプ」を使うと便利です。

Fig. 10‑12を回すと「現在設定されているループサイズの分だけ」移動します。ループサイズは、隣のもうひとつのノブで変更できます。ループサイズはFig. 10‑13に表示されています。

Fig. 10‑12

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Fig. 10‑13

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この機能はPC画面内ではFig. 10‑14のようになっています。

Fig. 10‑14

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ループジャンプを使って曲中をサーチしたいのであれば、ループサイズは「4」もしくは「8」をおすすめします。大体のあたりをビートジャンプで決めて、細かくはプラッターで調整します。

ミックスをする

どこでミックスをするべきか

どこでミックスをするかというのは、どのようにミックスするかよりも重要な問題です。これについては後述しますので、今のところは自分が優秀で経験豊富なDJだと思い込み、感性にしたがって決定してみることにしましょう。乱暴だと思うかもしれませんが、自分がその曲を大好きでよく知っているのであれば、その勘は大体の場合において機能します。まずは自分を信じてやってみてください。

とはいえ、一番簡単なのは、曲の終わりのアウトロと次の曲のイントロをつなげることです。通常、クラブミュージック用のトラックであれば冒頭にドラムだけの箇所があり、また最期もドラムだけの箇所があるはずです。この2つをつなげるのが一番無難な方法です。

アップ・フェーダーを使ってミックスする

2つの曲をミックスしていきます。Fig. 10‑15には3つのフェーダーがあります。縦方向のフェーダーが2つと、横方向のフェーダーが1つです。縦方向のフェーダーをアップ・フェーダーといい、横方向のフェーダーといいます。今回はアップ・フェーダーを使ってミックスをすることにします。

Fig. 10‑15

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まずFig. 10‑15のようにクロス・フェーダーを真ん中にします。今回は、クロス・フェーダーは固定し、動かしません。次にDeck A のアップ・フェーダーを一番上に上げた状態で、Deck Bは完全に下がっていることを確認してください。この状態であればDeck Aの音だけが会場に流れ、Deck Bの音は外に出ていないということになります。

Fig. 10‑16

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次にFig. 10‑16のようにDeck Bのアップ・フェーダーを徐々に上げていくと、音が少しずつ出てきます。

Fig. 10‑17

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Deck Bの音を外に流したら、次にFig. 10‑17のようにDeck Aのアップ・フェーダーを下げていき、Deck Aの音を完全に消します。

これで、Deck AからDeck Bに移ることが出来ました。単純にDeck Bのヴォリュームを上げて、Deck Aのヴォリュームを下げるだけです。

フェーダーを動かすタイミングは?

Fig. 10‑18

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Fig. 10‑18の順番でフェーダーが推移していくわけですが、そのタイミングはどうするべきでしょうか?これはミックスをどの位置で、どれくらいの長さをかけて自分がおこないたいか、ということと関連します。これについてはミックスの位置の解説とともに説明します。

しかし、簡潔に言えば、Deck Aが静かになる箇所でDeck Bを上げていき、Deck Bのメイン・パートが入るまでにDeck Aを下げればよいでしょう。もう一つアドバイスをするとすれば、Deck Aのフェーダーは思い切って下げるべきです。特にDeck Bで起きた何らかのアクションに隠れてフェーダーを下げるのがお勧めです。例えば、ドラムの派手なフィルインがDeck Bに入ってくる等々、新しい要素がDeck Bに加わるタイミングです。

クロス・フェーダーを使ってミックスをする

では次に、アップ・フェーダーではなく、クロス・フェーダーを使ってミックスをしてみましょう。

Fig. 10‑19のように、アップ・フェーダーはどちらも上げた状態で、クロス・フェーダー完全に左にすると、Deck Aの音だけが出ます。

Fig. 10‑19

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次にFig. 10‑20のようにクロス・フェーダーを右に動かしていくと徐々にDeck Bの音が大きくなっていき、完全に右になったときにはDeck Aの音が消えています。つまりクロス・フェーダーは「Deck Aのアップ・フェーダーを上げて、Deck Bのアップ・フェーダーを下げる」という行為を同時に行ってくれています。

Fig. 10‑20

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アップ・フェーダーとクロス・フェーダー、どちらを使うのがよいか

ルールはありませんが、ヒップホップなどカットイン(曲を比較的早く切り替えるミックス手法)を良く使うジャンルでは「クロス・フェーダー」をメインで使用し、ハウスやテクノなどロング・ミックス(2曲がミックスされた状態を比較的長くキープする手法)を多用するジャンルでは、アップ・フェーダーを使用することが多いでしょう。

カットインにクロス・フェーダーが適しているのは、片方のボリュ―ムを上げると同時にもう一方のヴォリュームを下げるという2つの作業を同時に行ってくれるのがクロス・フェーダーだからです。

またアップ・フェーダーがロング・ミックスに適しているのは、各デッキのヴォリュームを詳細に操作することができるからです。クロス・フェーダーでは各デッキのバランスを個別に調整することができません。

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