えー、巷はクリスマスですが、クリスマスは関係ないんだ、という方もいらっしゃるでしょう!そんな方のために、この記事を用意しました。クリスマスとは向かい合わずに、クリスマスソングと向かい合いましょう!今回の課題曲は「サンタが街にやってくる」です。
クリスマスソングには名曲が多い
課題曲「サンタが街にやってくる」や「きよしこの夜」、山下達郎さんの「クリスマス・イブ」等々、クリスマスソングには名曲が多いのですが、季節物である以上、1年のうち2日くらいしか、演奏や聴く機会がありません。しかし、考えようによっては1年に1回は聴くのですから、人生を通して考えてみると、かなり何度も聴く歌ともいえるかもしれません。そして皆さんの思い出の1ページに刻まれていくわけですね。もちろん新しい1ページが来ない人もいると思いますけれど!
冗談はさておき、クリスマスソングに名曲が多いのは事実です。まず下の動画をご覧ください。これはモータウンのアーティストが歌ったクリスマスソングのコンピレーションです。とてもかっこいい!!
モータウンとは
モータウンとはアメリカはデトロイトのレコードレーベルです。ジャクソンファイブやスティービーワンダー、マーヴィンゲイ、テンプテーションズやスプリームといった、大スターを輩出したレーベルで、60年代アメリカのヒットチャートを埋め尽くしました。そしてブラックミュージックをポピュラーな音楽にしたレーベルです。
(こちらのサイトが参考になります http://www3.ocn.ne.jp/~zip2000/1964.htm )
ちなみにモータウンというのは、デトロイトの愛称「モータータウン 」に由来しています。デトロイトは自動車工場が多かったのでもモータータウンと呼ばれていました。(今はほとんど工場は撤退してしまい、見る影もないのですが…)
モータウンがなければ今のポップミュージックもクラブミュージックもなかったのではないか、と私は考えています。それくらい影響力の強いレーベルです。使える美味しいコード進行の約30%がモータウンにあります。(あとは30%がディスコ、30%がUKロック。雑な分類ですいません…) 現代のヒットソングと同じコード進行を、大体モータウンのヒットソングから見つけることができます。ですからパクるならモータウンが最適です。
クリスマスソングはなぜかっこいいのか
先に結論をいってしまうと、以下のようになります。
- クリスマスという普遍的なテーマで曲作りがされるので、アーティストの自意識が出ておらず、結果として多くの聴衆に届く内容になっている。
- [1]に付随して「メロディ・コード・歌詞」が奇をてらっておらず、誰もが好きなベタなものとなっている。
- ベタとはいえ私たちが聴いているクリスマスソングは、毎年無限に出てくるクリスマスソングの「激戦を勝ち抜いた名曲」である。
つまり、ベタベタの歌詞、コード、メロディなのに、しかし人の耳に残る名曲だからこそ、名曲なんだ、というロジックとしては非常におかしな結論です。でも実はこれは、全ての名曲に当てはまるかもしれませんね。実は名曲のテーマは誰もが共感できる歌詞で、そしてコードもみんなが使っているもので、メロディも一歩間違ったらダサいくらいのものですよね。しかしみんなの心を引きつけるもの、それが名曲として時代を超えていくわけです。
サンタが街にやってきた/コード進行の分析
では実際に課題曲をみていきましょう。構造は簡単でAメロとBメロの2パターンしかありません。いつも通りコードはローマ数字と、それから今回はKey:Cでコードシンボルで書きました。メロディは、シラブルナンバーで書いてあります。(シラブルナンバーについてはこちらの書籍デモ版を読んでください)
Aメロ
まずAメロですが、これはなんの問題もありませんね。少し気になるとすれば「Ⅰ7、Ⅳ7」がドミナントセブンスになっているの点です。普通ならⅠとⅣ、もしくはⅠM7とⅣM7になるはずです。ダイアトニックコードがそうだからです。(ダイアトニックコードについてもデモ版を参照してください。)
ではなぜノンダイアトニックなコード「Ⅰ7とⅣ7」が使われているのでしょうか。結論からいうと、このコード進行はブルースフィーリングに由来する進行だからです。
ブルース進行との類似点
上の図は一般的なブルースのコード進行ですが、最初の4小節の雰囲気と課題曲の最初の4小節のコード進行が似ているのがわかりますか?Ⅰ7がⅣ7に進み、そしてⅣ7がⅠ7に進むという共通点があります。課題曲の最初の4小節はブルースのフィーリングと一致しています。それゆえここではドミナントセブンスコードがフィットする、といえます。
循環コード / リズムチェンジ
5〜8小節目はリズムチェンジもしくは循環コードと呼ばれるコード進行です。なぜならガーシュイン作曲の「アイガットリズム」で使われていることに由来します。日本では循環コードとも呼ばれるそうです。繰り返し使うことが出来るからでしょうか。
リズムチェンジのバリエーション1
ちなみにこのコード進行は以下のように変更して使われることもよくあります。
- C A7 Dm7 G7 → C
- C A7 D7 G7 → C
1.はAmをA7に変更しました。このA7はセカンダリードミナントです。
2.はさらにDm7をD7に変更しました。これもセカンダリードミナントです。
リズムチェンジのバリエーション2
さらに以下のように拡張することも出来ます。
- C C#dim7 Dm7 G7
- C C#dim7 Dm7 Bdim7
これはディミニッシュドコードの使い方が分かっていれば理解できます。この話はまた今度。
Aメロのメロディ
コードトーンを中心に使っている、非常に素直なメロディですね。
Bメロ
さてBメロに入っていきましょう。これは結構トリッキーです。問題は2つあります。
- #Ⅳm7b5、Ⅱ7は一体何故出て来たのか?
- #Ⅳm7b5の時のメロディ、「#2」は何なのか?
Bメロはシンプルなメロディのようにみえて、実は変化記号が結構着く複雑なメロディなんです。
#Ⅳm7b5はなぜ出てきたのか。
これは簡潔に言うと、Ⅳ→#Ⅳm7b5→Ⅴ7というコード進行が定番だからです。Ⅳが長く続く場合に、このように#Ⅳm7b5を挟むことがよくあります。使ってみましょう。
一応楽理的に考えてみると、17小節〜22小節をこのように考えてみることが出来ます。
- Ⅱm7→Ⅱ9→Ⅴ7
つまりⅡm7→Ⅴ7という簡単なコード進行の間に少しずつコードを拡張したと考えることが出来ます。以下のような順番です。
- Ⅱm7→Ⅴ7 (基本形)
- Ⅱm7→Ⅱ9→Ⅴ7 (Ⅴ7/ⅤとしてⅡ9を加えた)
- Ⅳ6→#Ⅳm7b5→Ⅴ7 (Ⅱm7をⅣ6と考える。Ⅱ9からルートを抜いたコード#Ⅳm7b5として考える。)
こう考えると非常にすっきりしますが、いつもこんな複雑に考えるわけにはいかないので、これはもう1つのパターンとして覚えてしまいましょう。
#Ⅳm7b5でメロディに#2が何故出てくるのか?
普通に考えたら、#Ⅳm7b5においてメロディは2もしくは1が使われます。何故#2なんでしょうか。ここを単に1としてしまうと、メロディとして違和感があります。ここは絶対に#2じゃないとおかしい箇所です。
これは結構考えたんですが、よくわかりませんでした笑 すいません。こういう時もあります。
一応今ベターな回答としては「#Ⅳm7b5が何故出てきたのか?」の項目で書いたことが参考になるような気がします。つまり最初のコードをF6ではなくDm7として考えてみるとスッキリします。何故ならマイナーコードのルートの半音したを使う、というメロディがよくあるからです。
ちょっと違うケースですが、久石譲さん作曲の「崖の上のポニョ」メインテーマ。ぽーにょぽにょぽにょ、という箇所ですが、Key:Cで考えると最初のコードはCで、メロディは「ぽーG / にょE / ぽーC / にょG / ぽF# / にょG」となっています。問題はこの「ぽ F#」です。なんで突然出てきたのか。
「F#」は、Cのコードトーンのうち5thにあたる「G」の「半音下の音」ですね。このようにコードトーンのうち、ルートと5thの半音下の音はよく使われるのです。大体、行って戻ってきます。
まとめると、ルートと5thの半音下をメロディに使うことが出来る。問題の箇所をDm7と考えると、C#は丁度ルートの半音下の音であるから自然だ、と考えることができます。
まとめ
では今回のまとめを。
- Ⅰ7→Ⅳ7の繰り替えしは、ブルースフィーリングを演出している。
- Ⅰ→Ⅵm7→Ⅱm7→Ⅴ7の繰り返しは、リズムチェンジと呼ばれるコード進行のパターン。バリエーションもたくさんある。
- #Ⅳm7をⅣとⅤ7の間に入れてみることができる。
- ルート、5thの「半音した音」をメロディに使うことが出来る。
以上です。ではよいクリスマスを!!