コード分析/aikoにおけるノンダイアトニックコードとモータウン定番コードの効果について


aikoの音楽って切ないですよね。恋が叶わない女の子の気持ちを、歌っているからかもしれません。

しかし今回は、歌詞ではなく音楽理論オタク的に、aikoが得意とする切ないコードについて注目してみたいと思います。

ということで、aikoの代表曲「花火」の分析いきましょう。

まずはいつも通りコードと歌詞を示します。
キーは本来はFメジャーですが、移調しCメジャーにしました。
こちらのほうがわかりやすいので。

「Aメロ」
眠りにつくか〜    あなたのこと〜
/C△ Bb△/Am Ab△/Em Am/FM7 G△/
夢は夢で目が〜    花火は今日もあがらない〜
/C△ Bb△/Am Ab△/Em Am/FM7 G△/

「Bメロ」
三角の目をした〜     恋の知らせを〜
/FM7 Fm7/Em7 Am7/FM7 Fm /Em Am   /
右腕に止まって〜     疲れてるなら〜
/FM7 Fm7/Em7 Am7/Dm7 Em7/FM7 F△onG/

「サビ」
夏の星座に〜     こんなに好きなんです〜
/FM7/Em7 Am7  (G)/F△ E7 /Am Gm7 C7/
夏の星座にぶら下がって〜     火を消した〜
/FM7/Em7 Am7  (G)/F△ Em7/Dm G7       /F Em7/Dm Dm on G/

分析を始める前に、基本事項として「ダイアトニックコード」という用語を確認します。

「ダイアトニックコード」とは、使用されている調性の中で一般的に使用される非常に基本的なコード、だとここでは考えることにしましょう。

バスケットで言えばスタメンです。レギュラーです。ああ、いつもの見慣れたメンバーね、って感じです。
逆にスタメン以外のメンバーが出てくるときには、何か「意図」があるわけですね。
あれ?いつもとは違うな?という雰囲気になる。
イレギュラーなわけですから、音楽理論的には注目せざるを得ません。

さて今回はキーがCメジャーですので、このCメジャーキーの「ダイアトニックコード」は以下のようになります。

Cメジャーキーにおけるダイアトニックコード
「C△ Dm7 Em7 F△ G7 Am7 Bm7-5」

では、改めてAメロから見ていきましょう。
最初の四小節、早速ダイアトニックコードではないコードが、2個も出てきました!!

眠りにつくか〜    あなたのこと〜
/C△ Bb△/Am Ab△/Em Am/FM7 G△/

Bb△とAb△ですね。
彼らは本来Cメジャーキーにはいない二軍です。
のっけから二軍出過ぎだよ!!

じゃあこいつらがどこから来たのかというと、実はCmキーからやってきました。
Cメジャーキーで二軍の彼らは、実はCmキーで活躍する一軍なのです。

「Cmキーのダイアトニックコード」(一部省略)
「Cm Dm7-5」EbM7 Fm7 Gm7 AbM7 Bb7」

さて今までダイアトニックコードを一軍、それ以外のコードは二軍と呼んできましたが、この考え方だと二軍のほうが一軍よりも単純に弱いコード=ダメなコードのような説明になってしまっているので、考え方をかえてみましょう。

二軍の彼らは、隣のクラスから来ました。
隣のクラスの生徒が、自分のクラスで授業を受けている。
違和感ありますね。
でもちょっと、楽しい。テンションあがる。
そういう感じです。

ということでBb△とAb△はとなりのクラス(Cmキー)から来たコードなので、いつも(Cメジャーの雰囲気)とは違う雰囲気になっています。

おそらくこれがBb△とAb△を使用せず、ダイアトニックコードだけの進行にするのであれば、こうなります。
/C△ G△/Am7 F△/Em7 Am7/FM7 G△/

もしこうだったら、切なくないよね?
ボブマーリーっぽい牧歌的な落ち着く感じ。
見慣れたコードだけで構成されるコード進行は落ち着く感じがします。
それに対して、aikoのコードは、隣のクラスから違うやつが混ざり、ちょっと不思議な感じがする。
これが一つaikoの特徴だと言えます。

「Bメロ」
三角の目をした〜     恋の知らせを〜
/FM7 Fm7/Em7 Am7/FM7 Fm /Em Am   /
右腕に止まって〜     疲れてるなら〜
/FM7 Fm7/Em7 Am7/Dm7 Em7/FM7 F△onG/

Bメロいきましょう。
最初の四小節では、Fm7がノンダイアトニックコードです。
これは先ほどと同じように隣のクラス Cマイナーから来たコードですね。

もしこれが、ダイアトニックコードだけで構成された進行であれば、こうなるでしょう。
/FM7 G7/Em7 Am7/FM7 G7/Em Am   /

いわゆるトゥモローネバーノウズ進行。みっくみっくにしてやんぞ進行ですね。

 

トゥモネバ進行には動きがあります。ベースノートが細かく動きます。

しかし、aikoは/FM7 Fm7/Em7とし、ベースの動きが小さくなる進行を選んでいます。

これもせつなpointではないでしょうか。

 

「サビ」
夏の星座に〜     こんなに好きなんです〜
/FM7/Em7 Am7  (G)/F△ E7 /Am Gm7 C7/
夏の星座にぶら下がって〜     火を消した〜
/FM7/Em7 Am7  (G)/F△ Em7/Dm G7       /F Em7/Dm Dm on G/

 

さあ最後はサビです。

ここでは先ほどまでのダイアトニックコードという説明方法をやめることにします。

何故なら、ノンダイアトニックコードが1つしか出てこないからです。

けれども、切ない。

ノンダイアトニックコードだけが切なさの要因、ということは当然ありえません。

 

aikoの元のコード進行を、多分僕のようなデトロイトはモータウン生まれのアーティストだったら、こんなコードに変えるでしょう。

/FM7 G7 /Em7 Am7/F△ E7 /Am Gm7 C7/

 

もしくはこれでもいい。aiko原曲の後ろ2小節の繰り返しですね。
②/FM7 E7 /Am Gm7 C7/ の繰り返し

①は前半がミクミクコードです。あげあげです。派手です。
aikoは、ミクミクコードのG7をあえて外すことで、切なさを出しているのかもしれません。

一般的にコード進行は頻度が多ければ多いほど、豪華で楽しそうに聞こえ、動きが少ないほど切なく聞こえるといえます。
間引くことによって生まれる静寂が、切なさを生んでいるかもしれません。

次に②ですが、これはソウルの定番コードで、SlyのIf You Want Me To Stayとか、林檎の丸の内サディスティックとか、なるちゃんのミラーボールとか、もう数えきれないくらい使われてる定番のやつなんですが、これ切ないですよね。
だから切ないんです。
強引ですけど。

もう少しちゃんと説明すると、実は①も②もキー的にはCメジャーではなくてAmに近いんです。
特に②はほとんどAm。
①も②もCメジャーのような気もするけど、ほんとはAm。でもAmというにはあまりに間にある。そんな揺れる乙女心のようなコードなんですね!!
強引だ。
けどそういうことにしましょう。

ということで、aiko「花火」を分析してきた訳ですが、今回は特にノンダイアトニックコードとモータウン定番コードに注目してみました。
この二つの要素に切なさを感じます、と。

とはいえ、感じ方は人それぞれですし、今回注目ダイアトニックコードだけで曲を作ったら切なくない、なんてことも一切ない。
他にもいろいろな切ない要素がありますよね。
しかし今回は「わかりやすく誰でも理解できる」部分の解説をしてみました。

おつかれさまでした!

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4 comments

  1. 最近、このサイトを見つけて楽しく拝見させていただいています。
    何故、「Bb△とAb△」が「G△とF△」に変換されるのかが理解できませんでした。

    1. 必ず変換されるというルールが有るわけではありません。BbとAbに役割が似ていて、Cメジャーキーのダイアトニックコードであるものから選択しました。

  2. GやFからみればBbやAbはm3となりますが、その他の構成音は確かに似てますね。
    最近、ようやく音楽理論の勉強をはじめた自分にとって、ダイアトニックの中にノンダイアトニックを差し込むことでハーモニーとしてスパイスになる考えは面白かったです。
    今までは、ダイアトニックコードを意識すらしてなかったレベルだったので。
    ありがとうございました。

    1. ノンダイアトニックコード、面白いですよね。実際の楽曲にも非常にたくさん出てくるので、どんどん取り入れてみてください〜。

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