近代和声の特徴
ドビュッシー勉強の記事で紹介した和音をみてもわかるように、近代クラシックの和音は、基本形を大きく変化させています。さらに、その変化が解決せずにキープされ、あたかも安定した和音のように振る舞います。これは近代以前にはあまり見られない特徴でした。伝統的に、変化した和音は解決を期待されていました。解決を期待されない変化した和音は、近代クラシック以降の特徴といえます。
さて、今回はこの変化した和音をどのようにジャズの文脈で活用するか、というアイデアを提示します。ただし、まだ自分の中でも体系立てる事が出来ていないので、無理に理解しようとしないように、お願いいたします。
概要
まずこのアイデアの基盤には伝統的なドロップ2ヴォイシングがあります。そして伝統的なDrop2ヴォイシングを拡張することで、モダンなサウンドをつくります。
Drop 2 とは
Drop 2 の詳細については以下の本等を参照してください。またDrop2の基本的な考え方についてはこちらの記事で説明しています。
Drop 2 を上記の楽譜を使って簡潔に説明すると、 メロディがCm6の音の場合はCm6の音でクローズドボイシングを行い、さらに上から2つの目の音をオクターブ下に下げます。メロディがCm6以外の音の場合は、Bdim7 = Ddim7 = Fdim7 = Abdim7 の音でクローズドボイシングを行い、上から二番目の音をオクターブ下に下げます。
このボイシングをDrop 2 といいます。かなり練習が必要ですが、リッチなハーモニーをつくるためには必要不可欠な技術で、多くのピアニストが泣きながら練習していると思います笑
m6とDiminished Chord のコンビネーション
さらに赤い音を追加しました。この音は、次のコードに解決されます。この赤い音は、以下の法則で選ばれています。
- 解決先がCm6の場合:Bdim7スケールの音
- 解決先がBdim系の場合:Cm6のコードトーン
赤い音は単音で弾くのではなく、解決先のコードと共に弾いてください。つまり最初の赤い音は、下から「A,Eb,G,D」というコードとして演奏してください。そして「A,Eb,G,C」に解決します。
上記の技術を内声に使う
先ほどは、トップノート = メロディにこの技術を使いましたが、今度は内声に応用します。赤い音を選ぶ法則は先ほどと同じです。また、先ほどと同じように、コードは解決されます。
解決しないDiminished Chord
今回のポイントはここです。今まで説明した技術においては、赤い音は通常のDrop 2 ヴォイシングのコードに解決していました。しかし、これをあえて解決せずに、独立したコードとして使用してみましょう。するとこのコードは、元のコードの質感を持ちながら、非常に現代的なサウンドになっています。上記の楽譜は一部を抜粋しました。コードネームは変化させる前の元のコードを表しています。
各コードは決して新しいものではありません。中には良くみかけるものもあります。しかし、元のコードの代わりにこのコードを使用すると、かなり刺激的です。そして同時にバランスが取れていることがわかります。
一般的にこのような指定されたコードから外れたサウンドを「アウト」と呼びますが、アウトにはバランスが必要です。完全に間違えていてはいけません。今回の方法を使うとギリギリのバランスを保つことができます。
ヴォイシングにはほとんど無限の可能性があります。ピアニストの練習時間の大半が、このヴォイシングの習得にあると思います。逆にいうと、たった12音の組み合わせですら、私たちが認識するのはとても難しいということがいえます。音楽の可能性はもはや追求し尽くされたという人もいますが、実際には全てを理解するには人生のほとんどを費やすことになると私は思います。
ではまた!
早速のご返事ありがとうございました!なかなか興味深そうな内容ですね。続きを楽しみにしております。それからドビッシー研究の最後のGbM7b5は、AbM7#11にすればまんまNefertitiの冒頭のハーモニーですね。b5thルートのC7b5とGbM7b5には自分も同じ印象をもっていました。ダークに拡がっていく響き。いいですよね。こちらもNefertiti研究がんばります!
ですね!現代ジャズにはクラシックに通ずるような美しい響きがたくさんありますよね。Nefertiti研究楽しみです!
バリーハリスの理論と近くて興味深いです!
どうして左手の初めの音はFでなくてEなんでしょうか?
okunoさん、コメントありがとう!
ドロップツーというのはジャズで一般的に教えられている技術です。バリーハリスと似ている点があるとすれば、彼独自のdiminishedコードの拡張との関係です。とはいえバリーハリスのメソッドの全体像が示された書籍がほとんどないために、バリーハリスメソッドに関しては、私もよくはわかっていません。何か資料の情報をお持ちでしたら、ぜひ教えてください。
そうですよね、説明に従えば、Bdim7の音を使うのだからFを使うべきですよね笑 自分で弾いてみて、こっちのほうがしっくりくると思ってFではなくEにしたようです。ただ解釈としては、BdimスケールのB C#…と続くほうのスケールにEの音が含まれていますので、その音からCm6に解決した、ということになるでしょうか。ポイントは、dim7とそれに含まれるスケールの音から選択するということになると思います。さらに進んで、dimスケールの音だけではなくて、いろんなところからCm6につなげることまでできてしまうと思います。着地するコードであるCm6と、そこに進もうとする不安定な音、というふうに分類して、いろいろなサウンドにトライしてみてください!
解説ありがとうございます。共通の音がないC#m6、Bm6など試してみたいです!
“The Barry Harris Workshop part1 ” “part2” という教則本は少し高めですが買いました。かなり詳しく書いてある本だと思います!ただDVDに出てくる生徒が上手くて理解度が高いので、アイデアは多いですが、説明は少なめです。
DVDが出てるんですね!!!見てみたい!!手に入れてみます。情報ありがとう!
ヴォイシングはいろいろチャレンジしてみてください。色々ありすぎて困っちゃいますね笑