菅野よう子[ライオン / マクロスF]の音楽理論的考察


「ライオン」はアニメ「マクロスF」のオープニング曲で、劇中でも非常に大事な役割を持った曲です。作曲は菅野よう子さん。世界に誇るれる日本の作曲家と誰もが認めるところであると思います。課題曲「ライオン」に散りばめられたテクニックと、しかしそのテクニックが全く目立たずに曲の一部に溶け込んでいるその芸術性の高さからも、菅野よう子さんの素晴らしさがご理解いただけることと思います。

さて、菅野よう子さんの楽曲の特徴は、以前「プラチナ」の時にも書きましたが、一見転調に感じられるが実際には転調ではない、非常にアンビヴァレントなコード進行にあります。そしてこのコードの選択は、既存の音楽理論ブックには書かれていないアイデアが多用されており、音楽理論の限界を認めざるを得ません。しかし、音楽理論家としては、やはり素晴らしいテクニックが広く浸透するような体系をつくることが一つのヴィジョンですから、むしろ既存の音楽理論の外側の、かつ合理的でイケてるテクニックがあるのであれば、音楽理論が拡張されうる契機だと思っています。ということで早速行きましょう。

Aメロ

スクリーンショット 2015-04-26 21.30.56さて、Aメロのコード進行の調性を曖昧にしているのは、Bmです。なぜならば、一般的によく知られているマイナースケール「ナチュラルマイナースケール」に含まれない音が、Bmに含まれているからです。具体的には、コードはAmから始まっているので、A ナチュラルマイナースケールが想定されますが、Aナチュラルマイナーに含まれていない音「F#」が、「Bm(構成音:B D F#)」には含まれています。

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さて、マイナースケールについて確認しましょう。上記の図を参照してください。マイナースケールには一般的に言って3つあります。この中でも一番ポピュラーなのはナチュラルマイナースケールです。そして上の図を見てもらえればわかりますが、AナチュラルマイナースケールにはF#は含まれていません。Fのナチュラルが使用されていますね。しかし、繰り返しになりますが、Bm(構成音:B D F#)にはF#が含まれています。つまり、Aナチュラルマイナースケールから外れている。そしてそれゆえ、この場所が、転調をしているように、「一見」感じられます。

「一見」といったのはつまり、違う、ということを今から説明するということです。

なぜこれは転調ではないのでしょうか?Aナチュラルマイナースケールに含まれない音がコードにあるのに、転調でないといえるのはなぜでしょうか?

簡潔にいうと、BmはAメロディックマイナースケールに含まれるコードだと考えることが容易にできるために、この場所は当然Amキーだと考えることができるというとことです。

音楽理論の知識がないと、分析する際にこのような箇所に振り回されてしまうと思います。しかし正確な知識を持っていれば、正面切って取り組むことができます。

逆にいえばこの箇所が美しいのは、分析する上でも間違えがちである、つまり聴感上、キーが曖昧になるという性質にもよります。この箇所は非常に大事なポイントであるということです。

次に問題になるのは、Dm7の箇所です。ここは正確にはAm7/Dです。ただしハーモニー的にはDm11(Ⅳm11)と考えるとしっかりAmの中に収めることができますし、実際演奏しても違和感はありません。ここではFはF#であって、F♮ではないことがわかります。決してGメジャーキーやEmキーではありません。

Fの音はF#であったり、F♮であったりします。これはつまり、3つのマイナースケールに含まれる音の可能性によるものです。3のスケールの選択によって、FとGの音は揺れ動きます。この揺れ動きを、菅野よう子氏は、非常に有効に、かつクラシックよりもかなり拡張して使用します。見事としかいいようがありません。

さて、以上のように、 Aメロのコードとメロディは全てマイナースケールの中に含まれていることがわかりましたが、課題曲の素晴らしさはコード進行というよりも、メロディにあります。そしてメロディが才能がない一般の人が見つけられないような場所に笑、配置されています。これについては、私もうまく説明できません。さしあたっては、鍵盤をおさえて、覚えるしかないと思います。

サビ

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さて、サビはEmキーです。冒頭のEmからDまでの進行は、マイナーキーの定番進行です。これは覚えてしまいましょう。ハリウッド的な泣きのエンディングテーマから、マドンナ的な洋楽まで多用されています。

問題はAm7/D→B7/D#です。この箇所は、ようはEmに戻るために、B7がⅤとなっています。つまりドミナントコードですね。それだけです。

Aメロとサビのブリッジ

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Aメロとサビをつなぐ場所ですが、EはⅤなので問題がないとして、問題はBです。本来であればBmもしくはBmb5がダイアトニックコードとして考えられるので、Bは本来的なコードではありません。これは、ダブルドミナントです。わかりやすくCメジャーキーで説明すると、D7 G7 Cというコード進行におけるD7がダブルドミナントです。今回の例で言えば、Eの五度上のBがダブルドミナントコードです。

この場所のもう一つのポイントは、メロディが同じ形で反復して上昇している点です。これは同じく「プラチナ」でも書きましたが、菅野よう子さんがサビ前に多用するテクニックで、しかも非常に効果的です!実はこれ、無限に反復できます。トライしてみてください。

まとめ

コード進行に関してはこのように整理することができました。しかし、重要なのはメロディです。そしてこれに関しては、分析できません。たくさん弾いて、覚えるしかないと思います。

ではまた!

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