プログラミングによって音楽理論教育はどう変わるか


http://neralt.com/jazz-voicing/

3月初頭よりプログラミングに取り組んできました。目的は「よりわかりやすく音楽理論を伝えるための」ウェブサービスを作成することです。書籍においても、図を多用することによって、音楽理論の面倒な部分が平易になるよう努力してきましたが、音楽の「ある側面」に関しては固定化された図によって表すのが非常に困難でした。

プログラミングだからこそ表現できること

ある「側面」とはつまり、「移調=transpose」です。例えばCm7とDm7は、実は全く同じ構造をしています。Cm7を全音上げる(移調する)だけでDm7になります。このようにCm7とDm7ととはシンプルな関係性にあるのですが、しかしこれを図で示すとなると非常に難しかったのです。もちろん、Cm7とDm7との関係だけを示すことはできなくはありません。ですが、その後ろには…Cm7とGm7の、Cm7とAm7の…と、たくさん関係性が隠れています。ですから、全て図示することは不可能でした。

この課題をクリアーするためには、動的に生成されるグラフィックによって説明する必要があると常々考えていました。つまり、法則性を保ったまま、考えられるバリエーションを図によって示せば良いわけです。そしてこれを実現させるためには、おそらく「プログラミングで、ウェブ上で動く何かを作る必要があるのだろう」と薄々感じてはいました。

そこで重い腰を上げて、プログラミングを勉強し、様々な方のサポートを得て、実際に動くサービスをいくつか作ってきました。そして、やっといい形のものが出来上がりましたのでご紹介させていただきます。

動的に生成される教材

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http://neralt.com/jazz-voicing/

このサービスのポイントは[+][-]ボタンです。これを押すことで、鍵盤の上に示された情報が、するすると動きます。つまり移調してくれるボタンです。このボタンによって、先ほど説明したコードとコードの関係性を感じる事ができるわけです。

他にも便利なポイントがあります。それは鍵盤の上に示されたコードトーンのルートからのインターバルです。例えばCM7コードのEの音は、ルートからMajor 3rdだということが、鍵盤に記された文字から簡単にわかります。しかもこの文字は[+][-]ボタンを押すと動きます。この点が動的なグラフィックの良い点です。紙には紙の良さがありますが、しかし動く図というのは紙には実現できない表現です。

紙のテキストの利点

プログラミングで作ったウェブサービスには、紙のテキストにはない利点があります。しかし、紙のテキストには紙のテキストの良さがあります。実際に私が販売しているのはPDFデータなのですが、ここで「紙のテキスト」といったのはつまり、「ウェブサービスのように動いたり計算してはくれない」データのことを指しています。動かないデータには、動かないデータの良さがあります。

まず第一に編集しやすいということです。これは本をつくる側の事情だと思われるかもしれませんが、読者にとっても利点があります。編集しやすいということは、推敲がしやすいということでもあります。本をつくるには、書きながら、何度も何度も推敲をして、ベストな表現や内容を残していく作業が不可欠です。この作業を通して、密度を上げていくわけです。この推敲が容易であるのが、やはり文字データや図表の良さです。

これが例えば動画やプログラミングだと、簡単に足したり引いたりすることはできません。動画の編集にはそれなりのスキルが必要ですし、プログラミングにするにも自分の技術が追い付いていなければ実現できないことがたくさんあります。形にする前にハードルがたくさんある上に、その作業も大変なのです。ですから、密度を上げていくのが非常に難しいと思います。(もちろん動画、プログラミングのプロフェショナルであるか、もしくはその作業を肩代わりしてくれる人がいれば別です。)

文字であれば、だれでも書くことができますし、ワードやサイトに載せるのも簡単です。ですから、比較的自分が意図した内容にまで作りこむことができます。

ウェブサービスと紙テキストの連携

ウェブサービスにはウェブサービスの利点があり、紙のテキストにも紙のテキストの利点がありますから、neralt.comではこれらを連携させていきます。「作りこまれたテキスト」と「動くヴィジュアル」の両方から挟みこむことによって、わかりやすい音楽理論の情報を今後も提供していきます。

Music Theory Workshop Japan今後の展望

ここで当サイトの方針を再確認し、また皆様へ提供する情報のクオリティに関するお約束とさせていただければと思います。

  1. グローバルに準拠した用語と学説の採用
  2. 学術レベルの精度
  3. ポピュラーミュージックに必要・役に立つ箇所のみを厳選し紹介する
  4. 動画・ウェブサービス・ヴィジュアルを組みあせ、深い内容を簡潔に伝える

1.グローバルスタンダードな用語と学説の採用

本サイトの用語・概念・学説は、「Tonal Harmony」(Stefan Kostka)、「Jazz Theory Book」(Mark Levine) に準拠しています。この二冊はクラシックとジャズの領域における音楽理論に関する世界的なベストセラーで、広くその用語や概念が認知されています。

音楽という非常に繊細な問題を扱う関係上、絶対的に正しいものが存在するわけではありませんが、セオリーである以上、まずは一般的に了解されている用語・概念から学習をスタートすることが、ユーザーにとっても最適だろうという考えに基づいています。世界中の電子書籍やインターネット上のリソースに簡単にアクセスできる今、英語圏で標準的に使用されている記号や概念に慣れることで、より広い世界に進んでいくことができます。

グローバル標準からスタートし、その上で独自の概念を導入する際には、その旨を明記しています。また、文献やリソースを明確にし、読者のみなさんが確認できるようにしています。

2.学術レベルの精度

1に関連しますが、紹介している内容が一体に何に基づいているのか、文献や論文を明記します。もちろんすべての問題に関して誰かが研究済みではありませんが、既に誰かがまとめた問題に関しては、参照することで精度を担保します。

またこれによって読者の皆さんは、より深く学習したい場合に、指定された参考文献からスタートすることができます。本来、学問というのは知識と知識が有機的に関係しているもので、その関連性を示していない情報というのは価値が低いといわざるをえません。読者の皆さんが今、膨大な研究の中の一体どの場所にいるのか、それを示す責任が私達にはあります。

その上で、新しい問題に関しては過去の研究を参照しつつも、恐れずに提案をしていきます。

3.ポピュラーミュージックにとって必要・役に立つ箇所のみを厳選し紹介する

学問的に誠実な態度を取りつつも、しかし、本サイトは研究者のためのサイトではなく、あくまで実際に音楽を創作・演奏する方にとって有益な情報を提供をするサイトです。ですから、実際にどうすればいいのか、どんな選択ができるのか、創作に役立てるという観点から、厳選した具体的な情報を提供しています。

あくまで私達の関心は、最高の音楽を作り、演奏することです。そのための知識を提供するのが本サイトです。クラシック・ジャズ・現代音楽と広範な領域の研究を参照しつつも、あくまで「今、音楽を創り演奏する人にとって」最適であるように心がけています。最高の音楽に向けてストラグルする読者の皆さんにコミットできる情報を提供しています。

4.動画・ウェブサービス・ヴィジュアルを組みあわせ、深い内容を簡潔に伝える

まず当サイトのベースは、既に販売しているPDF書籍になります。この記事の前半でもお話したように、推敲しまとめやすい書籍というフォーマットで、コードやスケール、分析手法といった体系的な要素を記述しました。まずは音程やコードの読み方、ローマ数字のふりかた、といった基礎的な力をこれでつけていただきたいと思っています。

その上で、 書籍だけでは伝わりにくい側面を、動画・ウェブサービスで捕捉し、より一層伝わるようにしていきます。しかしあくまで、深い内容を簡潔に伝えるのが当サイトの目的であって、内容のレベルを下げることはしません。クオリティは下げずに、しかし簡潔に、というのが目指す形です。

ということで、今後ともよろしくお願いします。

ではまた!

 

 

 

 

 

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