前チャプターで説明したSync機能は「Gridマーカー」が適正に配置されている状態でのみ、正常に機能します。ですからGridマーカーの設定方法を学びましょう。
Gridマーカーとは、曲の「拍の頭」をTraktorに教えてあげるためのマーカーです。
情報ディスプレイの詳細度を変更する
以下の写真の指定の箇所をダブルクリックすることで、情報ディスプレイの詳細度を変更できます。
Fig. 5‑1一番情報量が多い状態
Fig. 5‑2一番情報量が少ない状態
グリッドやキューを設定する場合には、一番情報量が多い状態にしてください。この状態の場合にしか画面に設定用の項目が表示されません。
グリッドを打つ
グリッドは、以下のボタンで打つことができます。(Fig. 5‑3) グリッドを正確にうつことによって、ビート・シンクが正常に機能し、結果としてBPMをあわせる手間がなくなります。Traktor Pro 2 は基本的に、Gridが正確に打てている前提で機能が動いています。ですから「Gridを正確に打つ」のがまず大事な作業です。
Fig. 5‑3
SnapとQuantizeのスイッチを「off」にし、自動調整をすべて切る
まずは以下のボタン「S」と「Q」をOffにしてください。(Fig. 5‑4) SはSnap、QはQuantizeで、どちらも自動的に配置やタイミングを修正する機能です。詳細はまた説明しますが、これをオフにしないと、勝手に調整され、狙った場所にマーカーを設置できません。必ずオフにしてください。
Fig. 5‑4
SQボタンがない場合は、View→Layoutで設定を
SQボタンがそもそも画面にない場合があります。その場合はView-Layouts-Extendedに設定してください。(Fig. 5‑5) Traktorはパラメーターが多く、一度に全て画面に表示できないので、Layouts設定でどれくらい詳しい設定が見えるのか決めることができます。Extendedは一番詳しい状態です。
Fig. 5‑5
「+」「−」で波形の詳細具合を調整するとグリッドが打ちやすい
以下の「+」「−」ボタンで波形の詳細具合を調整すると、グリッドが打ちやすいです。(Fig. 5‑6) 少し大雑把なViewで打つ場所のあたりをつけたら、次に詳細なViewで波形の頭にピッタリ合わせましょう。
Fig. 5‑6
ビートマーカーをまず、曲の頭に打つ
では早速ビートマーカーを打っていきます。先ほど説明したように、以下の画像のボタンでマーカーを打つことができます。(Fig. 5‑7) 波形詳細を見ながらきっちり合わせてください。
Fig. 5‑7
間違えたら、マーカーの近くのゴミ箱マークで捨てる
間違えたら、捨てたいマーカーの近くまで移動して、ゴミ箱マークで捨ててください。(Fig. 5‑8) ゴミ箱マークは、一番近いマーカーを捨てることになります。
Fig. 5‑8
少しだけずれたなら、ビートマーカーを微調整できる
以下のボタンで、ビートマーカーの位置を微調整できます。(Fig. 5‑9) これはあくまで間隔を調整するのではなく、ビートマーカーの位置を調整します。
Fig. 5‑9
マーカーを正確に打てたら、次は「間隔を調整する」
マーカーが打てたら、次に間隔を調整していきます。おすすめは、BPMが表示されている箇所を、上下にドラッグして直接変更する方法です。(Fig. 5‑10)
Fig. 5‑10
ずれている状態
Fig. 5‑11
(Fig. 5‑11) は、間隔が希望する値になっていないため、すこしづつずれていってしまい、後半ではかなりずれた状態になっています。希望している状態は、赤い縦線の位置に、拍頭がくる状態です。
修正する
Fig. 5‑12
本来の位置より左に「拍頭」がきてしまっていたので、「右に」動かして修正したいですよね。其の場合は、Fig. 5‑12の画像のBPMを「下にドラッグ」すればオーケーです。(96.700と表示されている箇所を下にドラッグする。)
- 右に動かす場合は、下にドラッグして、BPMを下げる。
- 左に動かす場合は、上にドラッグして、BPMを上げる。
Fig. 5‑13
するとFig. 5‑13の画像のように、狙った位置に移動しました。これでオーケーです。
Gridマーカーは何箇所でも打てる
実はビートマーカーは、何個も打つことができます。そして打った場所から、またビートグリッドをスタートさせることができます。これを使うことで、ちょっとした拍のズレはある程度修正できます。ただし、TraktorのBPM設定は曲を通して1つしか設定できないため、前半と後半で全くBPMがかなり異なる場合には対応できません。
BPM修正の裏ワザ
非常に作業が多いのですが、無理やりBPMが一定ではない曲をSyncする方法があります。具体的には、ループを作って、そのループを再生している間に合わせる方法です。
- ループをさせることができそうな場所のあたりを付けます。
- そのループをさせる予定の箇所の「冒頭」にビートグリッドを打ちます。
- その後、ループをさせる予定の範囲が、なんとかループできるようなBPMを探し、設定します。(このBPMをBPM1とします。)
- 最期にループを設定し、Cueに保存します。(このLoopをLoop1とします。)
これで、設定したループの範囲内ではシンクがうまく機能します。問題は、次の曲につなぐことです。これも上手くループを設定することで可能です。
- 曲の終盤、次の曲につなげるためのループ箇所を決める。(逆に言うと、この箇所をループさせる以外の方法で次の曲につなげることはできません)
- この箇所の冒頭にGritマーカーを打つ。
- この箇所がループになるようなBPMを探し出す。このBPMをBPM2とします。(最初のループのBPMはBPM1とします。)
- 最期にBPM2の状態で、新たにGridマーカーを付けた箇所からループを設定し、Cueに保存します。(このLoopをLoop2とします。)
- 以上の設定をした上で、最初はBPM1の状態で、Loop1を使って、前の曲からこの曲につなぎます。その後、この曲をMasterにし、Loop2が来る前に、Grid設定の中のBPMをBPM2に設定します。その後、Loop2の箇所が来た瞬間にLoop2を起動すると、うまくこのループが機能します。ですから、曲のタイトルにBPM1とBPM2を入れてしまうといいでしょう。
仕組み
Grid設定内のBPM設定を変えても、実は曲の再生速度はかわらないのです。(Masterになっている状態でなくてはいけませんが。) テンポコントローラーを触らないと、再生速度は変わりません。この性質を利用しています。
Grid設定内のBPM設定は、Gridの幅を決定しています。これを変えるのと、GridマーカーによってGridをリセットするのと、ループを無理やり使っています。
ポイント
ポイントは、BPM1をみつけ、設定した後にLoop1を設定することです。(同様にBPM2をみつけたあと、BPM2に設定した後に、Loop2を設定してください。)
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