本書は、現役で活動するミュージシャンの要望に応える形で執筆が始まりました。ですから、音楽活動を既におこなっているが、音楽的な疑問がある人の期待に応えることの出来る本になっていると思います。
私には、音楽理論に関する質問が、同じフィールドで活動するミュージシャンからよくきます。フィールドというのは主に、ロックバンド、トラックメーカー、DJです。
私の仲間が音楽的知識がないというわけでは決してありません。私の仲間は皆とても優秀な音楽家で、年間に何十本もライブをしていますし、曲もつくり、CDをリリース人間がほとんどです。
それでも、和音や音程について基礎的なスキルが不足している、と真摯に感じる人から質問がよく来ます。そしてそのような課題に説明をしていました。
彼らはいくつかの教則本を読もうとチャレンジしては、ある種のつまずきを感じて挫折していますが、既に音楽のことを熟知しているので、対面で説明すると瞬時に理解してくれます。
結局のところ、既存の本がミュージシャンにあまり受け入れられないのは、書かれている内容が、実際に即していない説明が多いこと、現代のミュージシャンのためのことを考えて書かれていないからではないかと私は思います。
実際に即していないというのは例えば、あまりに煩雑な音程の説明とか、よく使われるコード進行に関して説明がないとか、定義ばかりで実際に何をすればいいのかわからない、といったことがあげられます。
また、ミュージシャンのことを考えられていないというのは、定義の説明が全てで、実際に使えるようになるまでの練習問題が不足している、という点です。
ですから、本書で大切にしているのは以下のようなことになります。
1)現代の音楽家が必要な最小限な内容にとどめる
2)その内容が使えるようになるための練習問題を多く提供する
3)いつ使うのか、ということを明言する
例えば、以下の図表は、コードの練習問題です。これによって、あやふやになっていたコードの構成音を完全に使える状態にします。コードの仕組みははっきりいて簡単です。ですが、使えるようになるというのはまた別の段階です。練習をこなさねばなりません。本書はこの点を特に重要視し、大量の練習問題を用意しています。
本書は大きく分けて二つのセクションに分けることができます。
前半が学習と訓練で、後半が実践と分析です。
まず基礎的な概念であるインターバル、コード、ダイアトニックの学習と訓練をおこない、そして後半で、実際の楽曲のどこで使えるのか、実際の楽曲でどのように使われているのかを分析します。